不登校の将来に悩む中学生へ 不登校経験者のアドバイスを紹介

こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾の寺田淳平です。
不登校の中学生の親として、将来がどうなるのか不安です。
国の調査によるデータを見ると、80%が進学や就労を選んでいます。さらに20歳時点での生活状況を示した統計もありますね。
このコラムでは、不登校の中学生の将来の選択肢や、不登校経験者が感じる後悔、親御さんができる対応などについて解説します。
あわせて、実際の不登校経験者の体験談も紹介します。不登校の中学生の子どもの将来について悩んでいるという親御さんは、ぜひ参考にしてみてください。

共同監修・不登校ジャーナリスト 石井志昂氏からの
アドバイス
お子さんに向いた高校はきっと見つかります
不登校の人の将来は多様です。山あり谷ありで、いいことも悪いこともあるでしょう。ただ、不登校「だから」将来に悪いことが起きる、というわけではありません。いいことも悪いことも起きるのが人生というもので、それは不登校の人も学校に行っている人も同じなのです。
そして、不登校のお子さんのいまと将来のために大切なことは、「親から愛された経験」や「言葉にできない『学校への思い』を、無理に問い詰められなかった経験」などです。「人には不登校が必要なときもある」と思い、お子さんを支えていただければと思います。
私たちキズキ共育塾は、不登校の将来に悩む人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
目次
不登校の中学生の将来について:データで見る進学と就職の割合
この章では、不登校の中学生の将来の選択肢について、国の出している統計を交えながら解説します。
①不登校の中学生の80%は進学や就労

文部科学省の調査によると、「不登校だった中学3年生の81.9%は、20歳になったときは就学・就業をしている」というデータがあります。(参考:文部科学省『「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(平成26年7月9日)』)
つまり、中学生の時点で不登校でも、将来的には、ほとんどが高校や大学などに進学したり、就職したりしているということです。
実際、キズキ共育塾の講師にも、中学時代に不登校を経験したのちに、紆余曲折ありながらも進学や就職したという人がいます(経験談を以降の章で紹介します)。
不登校になると将来に不安を感じる人も多いと思います。しかし、しっかりと進路を選んで、その後の人生を充実させている人も少なくありません。
不登校に伴う不安や苦労があることは否定しませんが、「今の学校」に合わないからといって、別の学校や社会が合わないわけではないのです。
「たまたま同じ地域に住んでいる人が通う公立中学校」や、「カリキュラムや教育方針が決まっている私立中学校」などになじめなくても、お子さんの将来は開けますので安心してください。
②残りの20%も将来的に進学・就職することは可能です

前に紹介した調査では、「中学3年生で不登校だった人のうち、約20%は仕事も進学もしていない」という結果が出ています。
しかし、この調査は、あくまで「20歳時点」での話です。
「20歳を過ぎてから大学受験を目指し、合格した人」「20歳を過ぎてから就職活動をして、働き始めた人」などは、キズキ共育塾の生徒さんの事例だけを見ても決して少なくありません。
また、不登校を経験したかどうかに関わらず、20歳のときに「浪人していた」「資格取得のために独学で勉強していた」というような人も珍しくはありません。
後でご紹介するように、不登校のお子さんや、その親御さんを応援・支援する人たちもたくさんいますので、ぜひ積極的に相談・利用してみてください。
③ただし、「引きこもり」になる可能性も

平成30年度の内閣府の調査によると、「引きこもりになったきっかけ」として「小学生・中学生・高校生時の不登校」と答えた数・割合は、次のとおりです。(参考:内閣府『令和元年版・子ども・若者白書』)」
内閣府の調査内容
- 平成30年度:47名(複数回答数69件のうち、4件(69件の5.8%))
- 平成27年度:49名(複数回答数62件のうち、9件(62件の14.5%))
もちろん、非常に少ない割合ではありますが、「不登校は、引きこもりのきっかけになりうる」というのも事実としてあります。
不登校の中でも、対人関係に緊張・不安を有する方は、引きこもり化しやすいという説もあるそうです。(参考:高塚雄介『内閣府や東京都のひきこもり 実態調査から読み取れること ~ひきこもりの多面的理解と対応の必要性~』)
たとえ、引きこもりにまではならなくても、不登校の結果として、勉強の機会や社会との関わりが少なくなることは気にかけておく必要があるかもしれません。
引きこもりになっても、もちろん将来的に進学や就職をすることはできますが、引きこもりの期間が長引くと、お子さんも親御さんも「大変な思い」をする期間が長くなります。
もし、引きこもり化や何もしない期間の長期化についてのお悩みの方は、後述の相談相手を利用することで、お子さんの実状に沿った対応が見えてくるかもしれません。
不登校の中学生の「その後」~20歳時点での生活状況~

文部科学省が不登校の中学生の「その後」について、追跡調査をした結果があります。
先ほども一部挙げた2014年のデータになりますが、そこには当時中学生だった学生の20歳時点での生活状況が詳しくまとめられています。(参考:文部科学省『「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)』)
20歳時点での生活状況
- 就業のみ:34.5%
- 就学のみ:27.8%
- 就学かつ就業:19.6%
- 非就学かつ非就業:18.1%
中学校で不登校を経験した生徒は、「その後就職して働いている」割合が最も高くなっています。
上記のデータから、「約55%の人が20歳時点で働いているということ」、そして「約50%の人は、勉強を続けていること」がわかります。
また、20歳時点での具体的な就職状況と就学先については、以下のような結果が出ています。
就職状況
- 正社員:9.3%
- パート、アルバイト:32.2%
- 家業手伝い、会社経営:3.4%
就学先
- 大学、短大、高専:22.8%
- 高等学校:9.0%
- 専門学校、各種学校等:14.9%
このデータから、「不登校を経験すること」が「進路の幅を狭める」ということには、一概には言えないということがわかります。
将来に向けて不登校の中学生が実際にできること
「お子さんの進路・選択肢はある」という安心材料にしていただいた上で、実際に「あなたのお子さん」に向いた進路については、お子さんとも話しつつ、後述する相談先を利用することをオススメします。
ここからは、不登校の中学生の進路選択についてご紹介します。
①高校に進学する

1つ目の進路は、高校進学です。
不登校であっても(不登校経験があっても)、お子さんが高校に進学したい場合、お子さんに合う必ず学校はあります。
高校選びで大切なこと
- 全日制高校、通信制高校、定時制高校など、様々な種類と特色を理解する
- 普通科以外にも、看護科、商業科、工業化など、様々な科があることを理解する
- 様々な高校を探してみて、可能であれば見学会や説明会にも参加してみる
しかし、「不登校で学力や内申点が低いと、選択肢が減るのでは?」と不安な親御さんもいると思います。
実際にそういったケースは考えられます。ただし、その上で、受験方式も次のように様々で、対策もありますので、過度に問題視しなくても大丈夫です。
受験方式の種類
- 学力と内申点の両方を審査する高校
- 内申点を審査しない(学力試験だけで審査する)高校
- 内申点審査も学力試験もなく、面接や作文で審査する高校
もちろん、お子さんが現在中1や中2であれば、受験までに学力や内申点を上げることは十分に可能です。
中学不登校からの高校進学・受験の詳細、高校の種類、高校選びのポイントについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
②高校以外の学校に進学する
高校以外にも、例えば、高等専修学校や高等専門学校(いわゆる高専)も、進路候補となります。
高等専修学校とは、工業・医療・衛生分野などの、職業に関連した知識や技術を学ぶことができる学校です(「専門学校の基礎版」とイメージするとわかりやすいと思います)。
高等専修学校(平成30年度)
- 学校数:約400校
- 学生数:約3万6千人
(参考:文部科学省『未来をひらく高等専修学校』)
高等専門学校(平成28年度)
- 学校数:57校
- 学生数:約6万人
(参考:文部科学省『高等専門学校(高専)について』)
※一定の条件を満たすと、大学受験の資格を得られる学校もあります。
お子さんが職業に関係したいことを勉強したいという場合に、選択肢の1つとなるでしょう。
高等専修学校・高等専門学校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
③高認を取得して、大学や専門学校へ進学する

高校に行かずに、文部科学省が実施する高認試験(高卒認定、高等学校卒業程度認定試験)に合格して、大学や専門学校への進学を目指すという選択肢もあります。
高認試験に合格ことで得られるメリット
- 高校を卒業した者と同等の学力があると認められる
- 高校を卒業していなくても大学や専門学校の受験が可能に
- 就職や資格試験でも、高卒と同等として扱われる場合も
実際に、キズキ共育塾にも、高校を中退して、高認からの大学進学を目指している生徒さんは多いです。
高認は、様々な事情があって高校に通うことが難しい方には、有効な選択肢になります。
また、高校に通いながら受験することもできます。「高校に進学してみたけど、卒業まで通うのは難しそう」となったら、そこから高認にチャレンジしてみることも可能です。
高認試験は、高校で単位を取得していれば受験を免除される科目もありますし、逆に、高認に合格した科目を単位に換算できる高校もあります。
しかし、中学卒業後に高校に進学せず、最初から高認経由で大学や専門学校を目指すのは、以下の理由からあまりオススメしません。
- 高校に行かないことで寂しさを感じる
- 高校に通っている友人や知人にコンプレックスを感じる
- 中学に馴染めなかったとしても、高校にも馴染めないとは限らない
「最初から高認一本」というスタンスではなく、まずは高校などの学校進学と並行して高認も考えてみることをオススメします。
高認については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
④働く
中学を卒業してそのまま働くという選択肢もあります。社会に出て、様々な経験を積むことや自分でお金を稼ぐことで、多くの成長があるかもしれません。
ただし、中卒で働くのは、現実として厳しい側面もあります。
中卒ではたらくことの難しさとして、高卒や大卒と比べると、職業や働き方の選択肢が限られる可能性があるからです。
「中卒で働くなんてダメだ」とは言いません。ですが、その後の選択肢を広げるためには、前項までの学校の卒業や高認の合格も選択肢も入れるよう、お子さんと話しみてください。
もちろん、進学は中卒後すぐじゃなくてもいいですし、働きながらでも大丈夫です。
中学校での不登校が就職に関係する可能性は否定できません。
ただ、中学卒業後に高校などを卒業すれば、中学時代の不登校は就職とはほとんど関係ありません。
ちなみに、お子さんが「家計の状況が厳しそうだから進学せずに働く」と思っているようであれば、次のような対応をオススメします。
- 実際に家計が厳しいなら、一緒にアルバイト・奨学金・学費の安い高校など探して、進学も視野に入れる
- 実際には家計は問題ないなら、お子さんにきちんと伝える
もちろん、一度働いてみて、その後に進学や高認の取得を目指すということも可能です。
参考として、中卒から行きやすい業界については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
不登校の経験者が後悔していることとは
子どもの将来について、「人生で一度しかない学生時代を不登校で過ごすなんて、後悔するんじゃないか」という心配・不安がある親御さんもいるでしょう。
実際に不登校の経験者に話を聞きたくても、「後悔してる?」なんて気軽に聞けるものではありませんし、聞けたとしても、あなたのお子さんに当てはまるとは限りません。
ここからは、私たちキズキ共育塾が独自に取ったアンケートも交えて紹介していきます。
①不登校に対する後悔の有無

報告書には、不登校に対する後悔の有無として、以下のような設問があります。
今、考えると、小中学生の頃、不登校で学校に行かなかったことをどう思いますか。次の1~4の中からいちばん近いものをひとつ選んで○をつけてください。
この設問の回答結果(有効回答数1,604)
- 行けばよかった:606件(37.8%)
- しかたがなかった:494件(30.8%)
- 行かなくてよかった:183件(11.4%)
- 何とも思わない:273件(17.0%)
- 未回答・無効回答:48件(3.0%)
この回答結果から、次のことが読み取れます。
- 「行けばよかった」と後悔の念を抱いている人が最も多く、37.8%
- 「行かなくてよかった」という肯定的な回答は最も少なく、11.4%
不登校に対して後悔している人は、肯定的な人に比べて3倍以上もいるということがわかります。
ただし、上記は次のようなグループ分けで考えることもできます。
- 「行けばよかった」は「後悔がある」で、37.8%
- 「しかたがなかった」は「中立的」で、30.8%
- 「行かなくてよかった」「何とも思わない」は、「後悔がない」で、28.4%
こうすると、不登校について「中立的」「後悔がない」という人の割合が、「後悔がある」人たちよりもかなり多いことがわかります。
②不登校に対する後悔の内容
こちらの項目では、「不登校により失ったものがある」と回答した人数を100とし、失ったものの具体的内容の内訳をパーセンテージで示しています。
(a)学力、勉強(14.6%)
- 一般知識が欠如していると感じる
- 進みたい学校に進学できなかった
- 不登校による勉強不足で、高校、専門学校、大学でも学力差や勉強についていけない感覚がある
(b)友人関係(6.9%)
- 不登校当時に友人との時間が持てなかった
- 学生時代の友人が少なく、周囲がうらやましい
- 留年や浪人で、同級生が年下になった
- 学校でもっと友人をつくればよかった
(c)進路(10.9%)
- 進学や就職に悪影響を感じた
- 不登校でなければもっといい進学先や就職先に行けた
- 「今の自分の力ではこんな仕事しかできない」と自己否定的になった
(d)思い出(6.3%)
- 学校の楽しい思い出ができなかった
- 今の友人と、中学時代の思い出を語り合えない
- 成人式で、周りの参加者と思い出を共有できなかった
また、キズキ共育塾の生徒さんたちからは、次のような声もあります(一部です)。
- 中学で不登校になって、そのまま学校の友達と会わなくなった。そのモヤモヤを5年も引きずっている
- 学校行事に参加する、友だちと買い食いする、ちょっと誰かとケンカするといったような、中高生時代にしか体験できないことができなかった
- 不登校であることに劣等感を持って、面白そうな場所や活動にどんどん行けなくなった
- 高校を不登校から中退したことで最終学歴が中卒になって、進学や就職で不利になった(から、今学び直している)
- 些細なことで先生とケンカをして高校を不登校になったけれど、もっとよく考えてから行動すればよかった
③不登校を後悔していないという意見

逆に、不登校を肯定的にとらえている人の意見もあります。
報告書の内容及びキズキ共育塾の生徒の声を、分類・要約して見てみましょう。
当該項目は、「不登校により得たものがある」と回答した人数を100とし、得たものの具体的内容の内訳をパーセンテージで示しています。
(a)休んだおかげで今の自分がある(18.9%)
- 苦しんでいた時間があったから今の自分がいる
- 不登校のつらさを乗り越えて自信がついた
(b)成長した、視野が広がった(13.2%)
- 自分のことや周りのことが見つめ直せて成長できた
- 肯定的な休息だった
- 学校のメリット・デメリットが俯瞰的に見えた
(c)出会いがあった、学校に巡りあった(16.0%)
- 不登校の間に、新しい友達やカウンセラーなど、自分を支えてくれる存在と出会えた
- 不登校の自分を見捨てないでいてくれる友人や先生の大切さを実感した
(d)人とは違う経験をした(11.3%)
- 学校では得られない経験を積んだ
- 他の人とは違う見方ができるようになった
(e)その他
- 同じ経験をしている人の気持ちが理解できる
- 自分で決めたことなので後悔はしていない
- 無理して学校に行っていたら取り返しがつかなかったかもしれない
- 学校に行っていても今よりいい状況になるかわからない
- 友だちもいるし仕事もしているので後悔はない
また、キズキ共育塾の生徒さんからは、次のような声があります(一部です)。
- 登校し続けていたら精神的な不調が悪化したかもしれず、それを防げてよかった
- 他人と違う道を進むことに抵抗がなくなった
- 不登校をきっかけに、将来のことを真剣に考えるようになった
- 不登校のときに身につけた知識や雑学が、思わぬところで役に立った
④不登校の後悔についての補足
不登校期間中に継続して「何か」をやっておくと、継続できたという事実そのものや、それが具体的に役立つ機会によって、「不登校の期間があってよかった」と思える可能性は高まります。
ただし、心身の調子を整っていないときに無理は禁物(=心身の調子を整えることが一番)です。
嫌なことを無理やりするのではなく、楽しんでできることのほうがよいでしょう。
例えば、読書、動画編集、イラスト、プログラミングなどは、楽しみながら自分の自信につながるかもしれません。
また、もしかしたら「楽しんで」はできないかもしれませんが、「勉強」はもちろん一般論として役に立つでしょう。
不登校経験者の2つの体験談
不登校のお子さんの将来を考えるにあたって、実際の経験者の体験談を聞きたいという親御さんもいるでしょう。
ここでは、不登校経験を持つ、キズキ共育塾の講師による体験談を紹介します。
①全く後悔していない
私は中学不登校から高校に進学しましたが、不登校だったことに全く後悔はありません。理由は2つあります。
- 進学先で今でもつき合いのあるかけがえのない友人たちと出会えた
- 今に通ずる価値観を得られた
私は、高校受験・進学にあたり、私が中学で不登校だったことを知る人がいないであろう、地元から少し離れた学校を選びました。不登校でなかったなら、家から遠いその高校は選ばず、違う高校に進学していましたし、今も付き合いのある友人とは出会えませんでした。
また、もし不登校になっていなければ、おそらくこうして不登校の子を支援する仕事に就くことはなかったでしょう。自分自身が不登校というマイノリティを体験したことは、社会的にマイノリティな立場の方々や弱い立場の方々の不安や苦しみを理解する上での助けとなっています。
ただし、後悔はしていないものの、特に高校では、中学不登校の悪影響を感じることはありました。
- 不登校に伴い中学内容の基礎学力が完全に身についていたわけではないことから、高校で学ぶ単元の一部において、基礎がある他のクラスメイトとの間にハンデを感じたことがある
- 不登校時の生活習慣がなかなか改まらず、平均的な生徒と比べて欠席日数も多かった
とは言え、その悪影響は深刻なものではなかったようで、学力も出席日数も、中学に比べると良くなっていたことは確かです。
結果としてその後の私は、高校を卒業し、大学に進学・卒業でき、就職することもできています。
あなたのお子さんも、今現在で学校や不登校にまつわる悪影響や後悔をすでに持っていたとしても、これから楽しい時間や充実した時間を過ごすことで、それらを次第に小さくしていくことはできます。
重要なのは、不登校という過去や今にこだわりすぎず、これからの人間関係や勉強環境を大切にしていくことです。
②後悔もあるが、いいこともあった
私の場合は、不登校について、後悔もあるけれど、いいこともあったという認識でいます。
不登校で後悔したことは、給食、授業、運動会、文化祭、合唱祭、修学旅行、卒業遠足、卒業式などのイベントを経験できなかったことです。
ただ、不登校だった当時には、そのことに気づいていませんでした。なぜなら、経験していないために、それらが楽しいかどうかもわからなかったからです。
そんな私は、その後高校と大学を卒業し、一時期は都立の学校で教師として働いていました。そして、教師として上記のようなイベントを経験したとき、(教師という立場であっても、)それらを楽しんでいる自分に気づいたんです。
そのとき私は、学校に行けなかったことを、どこかで後悔していたんだなと改めて感じました。しかし、不登校でよかったこともあります。
その一番は、不登校を経験したからこそ出会えた人がたくさんいることです。
不登校でぽっかり穴があいたような気持ちだった私の心を、出会った人たちが少しずつ埋めてくれたように思えます。
よい出会いがあったこと、そしてそれに気づけたことが、不登校をしてよかったと思う理由です。
不登校のお子さんの将来に向けて、親御さんにオススメしたい対応
不登校の子どもの将来に向けて、親としてできる対応はもちろんあります。
ここでは、個々人の状況にもよりますが、一般論の範囲でオススメしたい対応を紹介します。
①親御さん自身のためにも、専門家・第三者を頼りましょう

大前提として、まずは、お子さんだけでなく、「親御さん自身」のためにも行ってほしいことがあります。
それは、ぜひ、「不登校に詳しい専門家・第三者を利用してほしい」ということです。
相談先となる専門家・第三者の例としては、次のようなものがあります。
- 市区町村の、子育てや不登校に関する相談窓口
- 不登校の「親の会」
- メンタルクリニックやカウンセラー
- 不登校の方々を支援する民間団体(私たちキズキ共育塾もその一つです)
お子さんにつきっきりになっていると、どうしてもお互いに疲れがたまるものです。
親としてお子さんが心配なのはとてもわかりますが、親は「不登校の専門家」ではないという自覚を持つことも大切です。
専門家・第三者を頼ることで、それぞれのご家庭・お子さんに応じた、より適切な対応ができるようになります。
話すだけでも気が楽になり、前向きな考えも浮かびやすくなります。ぜひ、専門家・第三者を頼ってください。
②お子さんの「気持ちをうまく言えない状態」を理解しましょう
お子さんの、「自分の気持ちをうまく言えない状態」を理解することも重要です。
不登校のお子さんは、自分でも自分の気持ちを理解できていないことがよくあります。不登校じゃなくても、子どもが思春期だと、気持ちを素直に話せないことがあります。
親御さんとしては、不登校のお子さんが何を考えているのか、何をしたいのか、気になると思います。親としては、「こうなってほしい」という願望もあるでしょう。
お子さんは、「中学卒業後の将来について、話し合いましょう」「この高校についてどう思う?」などと言われても(例えそれが優しい聞き方であっても)、うまく話し合えないことがあります。
お子さんが「気持ちをうまく言えない状態」であるとご理解の上、日常の会話や行動を通じて、少しずつ将来について話していくようにしましょう。
- 料理に興味があるみたいだから、一緒に料理をしながら話してみようかな…。
- スポーツに興味があるみたいだから、一緒に観戦に行ってコミュニケーションを取ろうかな…。
このように、日常を通じて「うまく言えない気持ち」を引き出していくことで、将来についてお子さんとしっかり話せるようになります。
③お子さんに「かけがえのない存在だよ」と伝えましょう

お子さんを大事に思っている、ということを、明確に言葉にして伝えましょう。
伝えるべきこと
- あなたはかけがえのない存在だ
- ありのままのあなたを受け入れる
- 私たちは、あなたが大切だ
不登校の子どもの方も「自分の将来はどうなるんだろう」と不安を持っていることが多いです。
しかし、前述のとおり、不安についても親にうまく伝えることができないことはよくあります。
親御さんが、明確に言葉にして「あなたが大事だよ」と伝えることで、お子さんは、「自分の親は、将来や不安の話をしても否定的にならずにちゃんと聞いてくれるかもしれない」と希望を持つことができます。
お子さんが不安について少しずつ話せるようになることで、不安はやがて解消されていくものです。
また、不登校になると、学校の友人とのコミュニケーションは少なくなります。
そのため、こういう言葉がけは、お子さんが引きこもりになるリスクを減らすことにも繋がります。
お子さんが「自分は家族からも受け入れられていない」と思ってしまうと、「自分を受け入れてくれる人はどこにもいない」と感じ、引きこもりになることがあります。
ですから、お子さんの悩みや孤独が深くならないためにも、言葉にして「大事だ」と伝えていきましょう。
声掛けの応用編の例としては、お子さんが「ゲームをしたい」「○○を食べたい」「マンガを読みたい」などというように言ったときには(思うところはいろいろあると思いますが)、まずは「そっか、○○したいんだね」といった言葉で受け入れてください。
また、「なんていうゲームをやりたいの?」「どこでそのマンガ買おうか?」というスタンスで話を聞くことも、お子さんの安心につながります。
④お子さんに、「家以外の居場所」を探しましょう
家庭以外の居場所を見つけることも大切です。大抵の子どもにとって、「居場所」は家と学校がほとんどです。
不登校で学校という居場所がなくなったお子さんには、居場所が家しかない状態なのです。
家にしかいないと、社会とのつながりがなくなり、どんどん内向きな思考になっていきます。
そして不登校の場合、内向きな思考はネガティブな考え方に陥りやすくなりますので、注意が必要です。
居場所の例としては、次のようなものがあります。
- フリースクールなどの不登校の子どもたちが集まるコミュニティ
- 地域の楽団や市民劇団などの趣味の集まり
- スポーツクラブや書道教室などの習い事
自分に向いた居場所が見つかると、お子さんは自分が他者に受け入れてもらえていることを実感し、将来について前向きになることができます。
お子さんと話して、ぜひ居場所を見つけるようにしましょう。
しかし、「居場所」の候補が見つかっても、不登校の子どもにとって「外の世界に出る」ことは、すごく勇気のいることだと思います。
ですので、慣れるまでの間は送迎などのサポートがあると、お子さんとしても安心して外出できるでしょう。
⑤お子さんの「勉強する機会」を保ちましょう

不登校になると、勉強をする時間は減りやすいと思います。そのため、心身の調子次第ではありますが、勉強する機会を保つことも考えてみましょう。
「学校には行きたくないけど、勉強は続けたい」と思うお子さんは割と多いです。将来に関わらず、勉強はしておいて損はありません。
「学校には行っていないけど勉強はしている」という状況は、お子さんの自己肯定感を保つためにも重要です。
また、お子さんに「勉強したい」と相談されたときは、「じゃあ学校に行きなさい」と言うのではなく、塾、家庭教師、通信講座などを一緒に探してほしいと思います。
お子さんの状況にもよりますが、「学校は行かなくていいけど、(塾などで)勉強する?」などと、親の方から声をかけてみることもオススメします。
⑥お子さんに「進学できる選択肢があること」を伝えましょう
先ほどもお伝えしたとおり、不登校でも進学できる高校・学校はたくさんあります。
中学で不登校だと、直近で一番不安に思うことは、「高校(など)に進学できるのだろうか」ということではないでしょうか。
それはお子さん本人も同じで、以下のような不安を感じていると思います。
- 内申点が低いから、合格できないのでは…
- 受験勉強ができていないから、合格できないのでは…
- 仮に進学できても、毎日通う自信がない…
中学の出席日数が少ないと進学できない高校」は、確かにあります。
ですが、中学不登校から進学できる高校もたくさんあります。
中学での出席日数を問わない高校もありますし、受験で学力試験がない高校もありますし、毎日通学しなくてよい高校もあるのです。
中学不登校から進学できる学校の例
通信制高校、定時制高校、一部の私立高校、東京都ならチャレンジスクール、神奈川県ならクリエイティブスクールなど
このように、「選択肢がある」と知ったお子さんは、無用の焦りや苦しみから解放され、将来に前向きになれます。
その上で、「どんな学校なら進学できそうか、どんな学校なら通いたいか」をお子さんと一緒に考え、学校見学なども行ってみてはいかがでしょうか。
参考:学校休んだほうがいいよチェックリストのご紹介

2023年8月23日、不登校支援を行う3つの団体(キズキ、不登校ジャーナリスト・石井しこう、Branch)と、精神科医の松本俊彦氏が、共同で「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を作成・公開しました。LINEにて無料で利用可能です。
このリストを利用する対象は、「学校に行きたがらない子ども、学校が苦手な子ども、不登校子ども、その他気になる様子がある子どもがいる、保護者または教員(子ども本人以外の人)」です。
このリストを利用することで、お子さんが学校を休んだほうがよいのか(休ませるべきなのか)どうかの目安がわかります。その結果、お子さんを追い詰めず、うつ病や自殺のリスクを減らすこともできます。
公開から約1か月の時点で、約5万人からご利用いただいています。お子さんのためにも、保護者さまや教員のためにも、ぜひこのリストを活用していただければと思います。
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」はこちら(LINEアプリが開きます)
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」作成の趣旨・作成者インタビューなどはこちら
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のメディア掲載・放送一覧はこちら
- 【オリジナル書籍プレゼント】学校外で友だちができるBranchコミュニティ(Branch公式LINEが開きます)
私たちキズキでは、上記チェックリスト以外にも、「学校に行きたがらないお子さん」「学校が苦手なお子さん」「不登校のお子さん」について、勉強・進路・生活・親子関係・発達特性などの無料相談を行っています。チェックリストと合わせて、無料相談もぜひお気軽にご利用ください。
まとめ:お子さんの話によく耳を傾けつつ、専門家や第三者を頼りましょう

実際に進路を決めるときには、お子さんの話によく耳を傾けつつ、ぜひ、専門家や第三者の意見を求めてください。
そうすれば、不登校の中学生の親御さんの不安は、きっと解消に向かうと思います。
私たち、キズキ共育塾でも、不登校の中学生のサポートをしています。
中学校で不登校になった生徒さんが「次の一歩」に向けて勉強しています。
ご相談は無料で、親御さんのみの相談も受け付けておりますので、少しでも気になるようでしたらお気軽にお問い合わせください。
/Q&Aよくある質問
中学生の子どもが不登校で、将来が心配です。
中学生で不登校の子どもの将来のために、親ができることを知りたいです。
- 親御さん自身のためにも、専門家・第三者を利用する
- お子さんの「気持ちをうまく言えない状態」を理解する
- お子さんに「かけがえのない存在だよ」と伝える
- お子さんに、「家以外の居場所」を探す
- お子さんの「勉強する機会」を保つ
- お子さんに「進学できる選択肢があること」を伝える